夢見水

ショートショート作品
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 夢が好きだ。

 夢といっても、夜に見る夢である。

 でも夢は見れる時と見れない時がある。

 私は、もっとたくさん夢が見たい、と思っていた。

 そんな時「夢見水」というものを知った。

 この水を専用の加湿器に入れると、夢見水のミストが部屋に充満して、夢を見られるようになる。

 そして、夢見水の効果で、見た夢の内容をちょっと覚えているのである。

 私は夢見水を愛用し、たくさんの夢を見ることができた。

 しかし、体が夢見水のミストに耐性を持ってしまったようで、段々効果がなくなってきた。

 この小さい加湿器からでは、少し散布量が足りないのだろうか。

 私は大きめの空気清浄機に夢見水を入れてみた。

 この空気清浄機には加湿機能もあって、たくさんミストを撒けると思ったのだ。

 空気清浄機に夢見水を入れたところ、ぐっすり眠れて、たくさん夢が見られるようになった。

 昼間に空気清浄機を使う時は、きちんと給水タンクを洗っているから大丈夫だ。

 そんなある日、夫と食事に出かけた際に、出し抜けに夫が「ねぇ、あれ、いつ買ってくれるの」と言った。

「あれって?」

「ゴルフのクラブだよ。欲しいやつなんでも買ってくれるって言ってたじゃない」

「何言ってるの!? それより、あなたこそあのアクセサリー買ってくれるって」

 そこまで言って、私は、はっとした。

 どうやら、指定の加湿器以外での夢見水の使用は、やはり弊害があったようだ。

 おそらく、給水タンクを洗っても清浄機自体に夢見水が少し残った状態だったのだろう。

 家にいる時の私たちは、夢見がちなことをよく言ってしまっているようだ。

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