鼻風おじいさん

ショートショート作品
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 僕の通っている小学校の近くには公園がある。

 そこの公園にあるベンチにはいつも「鼻風おじいさん」が座っている。

 そのおじいさんを笑わせるとおじいさんが「フォッ」と声を上げて笑い、その鼻から小さなつむじ風が飛び出す。

 風はくるくると渦巻いて公園の芝生がそれに合わせて踊っているように揺れるのだ。

 それが面白いので、僕は友達と一緒によくその公園に行っておじいさんを笑わせていた。

 そんなある日、公園のそばをロケ中のお笑い芸人さんが通りがかって騒ぎになった。

 僕たちはみんなでお笑い芸人さんの所に行って「この公園には面白いおじいさんがいるんだよ」と話しかけた。

 するとお笑い芸人さんは「へぇ」と面白がっておじいさんのところにやってきた。

「おじいさん、こんにちは」

 お笑い芸人さんはそう言ってからテレビでもよく見る一発ギャグを披露した。

 するとおじいさんが「フゴホォ!」と盛大に吹き出し、その拍子に飛び出した入れ歯が僕のところに飛んできた。

「うわ、汚い!」

 そう飛び退いた僕を見てお笑い芸人さんが笑った。

 その瞬間、おじいさんの鼻から巨大な竜巻が飛び出した。

「うわぁあ!」

 竜巻はすごい勢いで、僕は自分の体が一瞬空中に浮かぶのを感じた。

「危ない、逃げろ!」

 真面目な顔になったお笑い芸人さんがそう叫ぶ。

 僕は友達と一緒にそこから走って逃げた。しかし一人だけ逃げ遅れた。

 おじいさんである。

 おじいさんは竜巻の回転に巻き込まれ、空をぐるぐると飛んだ。

「おじいさーん!」

 僕はおじいさんに向かって叫んだが、当のおじいさんはくるくる回るのが楽しいらしく「フホッ」と笑った。

 すると鼻からまた小さな竜巻が飛び出し、竜巻はさらにその勢いを増した。

「おい、じいさん! 笑うのをやめろ!」

とお笑い芸人さんが叫ぶ。

 しかしおじいさんはもはやそんな声は聞こえないようで、肩を震わせて笑っている。

 竜巻はどんどん大きくなった。

 仕方なく僕たちが学校に避難すると、竜巻はあたりの木々をなぎ倒しながら移動していった。

 僕たちは公園にいた大人と一緒に学校にあるテレビをつけた。

 するとニュース番組が緊急生放送で竜巻の様子を放映していた。

 おじいさんの竜巻はどんどんその勢力を増して東へ移動していた。

 そして竜巻は最終的に海へ飛び出した。

 海を何キロも何キロも移動した後、竜巻は消滅した。

 おじいさんは竜巻から海へ落下したけれど、海上保安庁の救助隊に助けられたらしい。

 そしてこれはテレビで放映されていて知ったのだけれど、おじいさんの鼻から竜巻が出る原因や対処法について聞かれたお医者さんは「いや、よく分からないですがとりあえず鼻栓をすればいいのでは」と答えたらしい。

 そんなわけで一週間くらいしたらおじいさんは公園に戻ってきた。

 僕は預かっていた入れ歯をおじいさんに差し出した。

「おじいちゃん、鼻栓取っちゃだめだよ! はい、入れ歯!」

 おじいさんは僕の差し出した入れ歯を見て肩を大きく揺らしたけれど、ちゃんと鼻栓をしているので鼻から竜巻は出なかった。

 よかったと僕が安心したその瞬間、おじいさんが「フハァッ」と笑い、その鼻……からではなく口から小さな竜巻が飛び出した。

 その勢いで僕の持っていた入れ歯が飛んだ。

 そしてそれを見たおじいさんが、また「オホッ」と笑って……

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