小狐

ショートショート作品

愚鈍うどん

 俺は学校を卒業してから働かずにずっと実家の二階でゴロゴロしていた。  しかしある時「何かやってみようかな」と急に思い至った。  何かとは何か。  うどん作りである。  適当にしていたネットサーフィンでうど...
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りんご電球

 あるところに、美里という女の子がいた。  彼女の趣味はカフェ巡りだった。  ある日、彼女は立ち寄ったカフェで面白い電球を見つけた。  その電球から溢れる光りは温かく、店内には落ち着いた雰囲気が漂っていた。 ...
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客寄せパンツ

 俺は脱サラをしてたこ焼き屋を始めた。  小さな店だが気に入っている。  売上もまずまずだ。  だが……一つだけ気がかりなことがあった。  半年ほどたこ焼き屋を運営してみて分かったのだが、どうも客がたくさん...
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大嫌いな雨音を

 私は生まれた時から困った性質の持ち主だった。  雨の音を聞くと、眠ってしまうのである。  それはなんとなく気持ちよくてまどろむとかそんな生易しいものではなくて、雨が落ちるパラパラという音を聞くだけで深い眠りに落ちてしまう...
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最後のぬりえ

 子供の頃、お母さんについていったスーパーでおもちゃコーナーにあったぬりえを買ってもらった。  ぬりえのキャラクターは全然知らないキャラクターだった。  そのキャラはどうやらお姫様のようだった。  家に帰った...
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息子の将来

 私は今、二階の部屋に籠もっている息子のアキラのことを考えていた。  アキラは三年前からほとんど部屋から出てきていない。  アキラのことだけでも心配は尽きないのに、先月、一緒に暮らす義父が倒れた。  幸い命に別状は...
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太鼓餅演奏大会

 今日は高校最後のクラス行事「太鼓餅演奏大会」の当日である。 「太鼓餅演奏大会」とはその名の通り太鼓のように膨らんだ餅を叩いて演奏する文化系の行事である。  私は今年高校三年生なのでこれが最後の太鼓餅演奏大会だ。 ...
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さまよいだれ

「あ、しまった。綾瀬。あんたもう帰ったほうがいい」  雪代教授がいきなりそんなことを言った。  私の通う女子大の教授である雪代教授は私の憧れである。  白衣を着てビシッと決めた姿は同性である私から見ても魅力的だ。 ...
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餅ランタン

 彼の実家であるこの町にやってきた私は、七輪の上に載っている餅をじっと見つめていた。 (限界……)  お腹はぺこぺこだった。  何しろ、お昼にこの町についてからすぐに私は餅をついたのだ。  今日はちょうどこ...
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濾過風呂敷

「部屋にあるもの、少しは捨てなさい! 床が抜けるよ!」  お母さんがまたそんな大げさなことを言う。  お母さんは二階にある私の部屋にやってきては、時々そうやって小言を言うのだ。  いつもは適当に聞き流しているのだが...
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