ショートショート作品

ツボ治験

 僕はお笑い芸人をやっている。  しかし芸人だけでは食えないので、治験のアルバイトをしている。  治験といっても、薬の治験ではない。 "ツボ治験"というものだ。  ツボを押すことで、どう健康になるかを調べる...
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途中絵本

 幼い頃読んでいた絵本はおかしかった。  最後まで読んでも、結末のページがないのである。  両親に最後はどうなったのかと聞くと、自分で考えてごらんと言われた。  我が家の絵本は全部そうなっていたので、それが普通だと...
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旋回マント

 僕の町には「旋回マント」がいた。  町の上をぐるぐるとマントが飛んでいたのである。  何のマントなのかは分からない。  日夜、マントはぐるぐると町を旋回し、人助けをしていた。  荷物が重くて困っている人が...
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免許制のお話

 人に物語を語る時に免許がいるようになったのはいつ頃からなのだろう。  昔は自分で作った話でも、自由に話して聞かせてよかったらしい。  しかし現代においては、人にお話を話して聞かせる場合、免許がいる。  それが例え...
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悟りの自販機

 悟り自販機、という自動販売機が稼働を始めた。  自販機から出てきた缶の中にある空気を吸い込むと、悟りの境地に至ることができる、という優れものである。  僕は今、部長に呼び出されている。  部長のデスクに向かう前に...
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愛情圧測定器

 彼のことが好きだ。  しかし、その「好きだ」という愛情が困りものなのである。  私は今まで付き合った人たちから「圧が強いんだよ」と言われてきたのだ。  好きになると、ぐいぐい行き過ぎるのが私の悪い癖である。 ...
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抱かれ枕

 私は今、新商品の開発に関わっている。  その商品とは「抱かれ枕」である。  自分で枕を抱くのではなく、優しく包み込むように抱いてくれる枕が欲しい、という社員の要望をアイデアにして作り出した商品だ。  枕は動物をモ...
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経費探偵

 経理部の部長を務める私は会社の財政再建のために、ある探偵を雇った。  彼はすぐにやってきた。まだ若い。  敏腕の探偵、というよりは若手の社員のようだ。  彼は"経費探偵"と呼ばれる探偵である。 「さっそく...
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クレーム処理の最適解

 私は責任者としてテレビの取材に答えた。 「弊社のコールセンターは……」  こうして取材に答えるのは私のような人間だが、コールセンターで実際に稼働しているのはAIである。  コールセンターに電話してきたクレーマーは...
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気のせいの精

 色々なことを気にしがちな私は、「気のせいの精」を雇った。  ある占い師に紹介してもらったのである。  気のせいの精は、私が「みんなから変に思われたらどうしよう」とか思った時にやってきて、 「気のせいだよ」と言ってく...
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