僕はお笑い芸人をやっている。
しかし芸人だけでは食えないので、治験のアルバイトをしている。
治験といっても、薬の治験ではない。
“ツボ治験”というものだ。
ツボを押すことで、どう健康になるかを調べるもので、治験のアルバイト中は隔離空間で様々なツボを押されるのだ。
どうせなら笑いのツボなんかも知りたいなぁ、なんて思いながら僕は治験のアルバイトに勤しんでいた。
治験というのはいいお金になるので、なんとか生活は成り立っていた。
ある日、嘘から出た真ではないが、なんとお笑いのツボが発見されたらしい。
僕はさっそくその笑いのツボの治験のアルバイトに参加した。
実際にツボを押されて分かったのだが、確かに、何もおかしくないのに笑ってしまう。
これは……!
普通の人よりも早く笑いのツボを知ることができたので、なんとかこれを芸人活動に活かすことができないか、と僕は考えた。
しかしよく考えれば、そんなツボを知っていても、ライブ中に観客のツボを押すわけにはいかないので、意味がない。
僕がガックリしている間に、僕が治験したあの笑いのツボが実用化された。
なんでも、履いているだけで笑いのツボを刺激して、笑ってしまう靴が発売されたというのだ。
それから僕は、ライブでお客さんが笑ってくれていても、その靴を履いているのではと勘ぐってしまうようになったのだった。
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