途中絵本

ショートショート作品
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 幼い頃読んでいた絵本はおかしかった。

 最後まで読んでも、結末のページがないのである。

 両親に最後はどうなったのかと聞くと、自分で考えてごらんと言われた。

 我が家の絵本は全部そうなっていたので、それが普通だと思っていた。

 だから、私の中で桃太郎は最後鬼と仲良しになって幸せに暮らしたし、浦島太郎は海鮮丼を食べてお腹を壊した。海鮮丼って……よく考えるとバイオレンスだ。

 どうやら両親は、私の創造性を育てたかったらしい。

 だがおかげで昔話をみんなとは違う覚え方をしてしまい、学校で恥をかいた。

 子供が生まれたので、私もあの途中までの絵本を試してみることにした。

 だが、破る場所を間違えてしまった。

 娘は、浦島太郎は釣りをして溺れて、竜宮城に行ったと思っている。

 親子揃って浦島太郎に厳しいなぁ……。

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