踊る衣服たち

ショートショート作品
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 友だちの家にやってきた。

 買ってきたお菓子の袋を開けようとすると、友だちが「どうしようかな、やめようかな」と言った。

「珍しいな」

 僕が言うと友だちは「節制しようと思ってね」と笑った。

 それから二人でゲームをしていると、ベランダの方で何かがゆらゆらと揺れていた。

 それはどうやら服のようだった。

 僕は不思議に思い、言った。

「あんなに風吹いてたっけ……?」

「あぁ、あれ。あれは踊る服だよ」

「え?」

「あぁやって勝手に揺れて乾かしてくれるんだ」

「へぇ、いいね」

「でも気をつけないといけないこともあるんだ。この前、ズボンがなくなってね。腹回りがキツくなったから逃げ出したんだろう。風に乗って行ってしまったんだ。だから今日は菓子はやめておくよ。いつか帰ってきてくれるかもしれないからな」

 友だちはそう言って笑った。

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