ショートショート作品

麻酔同窓会

神崎から同窓会の手紙が届いた。 正直「あいつが?」と思った。 神崎は小学生の頃仲が良かった友達だけれど、同窓会を主催するようなタイプではない。 どちらかというと、物静かな秀才タイプというか。 そして、この同窓会の手紙がこれまた、変わ...
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赤ペンを担いだ猫

 ある大雨の日だった。  我が家に赤ペンを担いだ猫がやってきた。  ピンポーンと音がしたので玄関の扉を開けてみると、黄色い雨合羽を着た猫が立っていたのだ。  雨合羽の帽子をすっぽりかぶった、茶トラの猫。 「...
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線香寺

近所に「線香寺(せんこうじ)」というお寺がある。 このお寺では、ある年に一風変わったカウントダウンが行われる。 今年はそのカウントダウンが行われる年だ。 線香寺には「線火楼(せんびろう)」という場...
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浮き輪国

浮き輪国の紳士に出会ったのは、僕が無人島で遭難していた時のことである。 一人で島巡りをしていたところ、船が突然大破。 なんとか流れ着いた無人島で「これまでか」と途方に暮れていると、海岸の近くに大きな浮き輪と紳士が現れた。 紳士は直径十...
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フクロウ貯金

「貯金できない男の人は嫌い」 それが直近のフラれ文句だ。 そうとも。俺は貯金ができない。 会社から給料が振り込まれれば一ヶ月の間に全て使ってしまう。 若い頃にはそれが「豪快でいい」「若者らしい」とプラスのイメージにつながることもあっ...
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山火の男

  山小屋までの時間を見誤り、すっかり日が暮れてしまった。   真っ暗な山道をヘッドライトの明かりを頼りに歩く。   と、近くで明かりがぽぉっと灯るのが見えた。   山小屋とは方角が違うようだが。   なんだろうと思い、明かりが灯った方向に...
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ふたりの浜辺

 夫の荷物を整理していると、一枚の封筒が出てきた。  真新しい封筒の中に一枚の写真が入っている。  それは浜辺を映した写真だった。  家の中が少し落ち着いた頃、私はあの浜辺にやってきた。  写...
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オブラートに包まれた私

最近、なんだか辛いなと思うことが多くなってきた。 テレビをつければ嫌なニュース、SNSを覗けば誰かが炎上してる。 見なければいい、聞かなければいいという意見も分かるのだけれど、どうしても気になってしまうし、触れないようにしていてもそうい...
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おじさんはシャボン玉名人

私はおじさんのことがとても好きでした。 実家のすぐ近くに住んでいたおじさんはシャボン玉名人で、普通とは違うシャボン玉をたくさん教えてくれました。 いつもシャボン玉遊びをする神社の境内にやってくると、おじさんはシャボン玉液の配合を始めまし...
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タッタッタ

いつからか"タッタッタ"という音が聞こえるようになった。 誰かが後ろから近づいてくる音。 タッタッタという音がすると首の後ろがゾクゾクと震える。 だからその音がすると僕はいつも後ろを振り返る。 振り返ると足音は止まる。 タッタッタ...
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