ショートショート作品

眠りの壺

ネームが煮詰まった俺は、知り合いの漫画家を訪ねることにした。 調子が出ない時は同じ苦しみを味わっているはずの友人と酒でも飲むのが一番良い。 友人宅に着き、呼び鈴を鳴らしたが返事がない。 ドアノブをひねってみると、するっと開いた。 不...
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心泥棒に出会う方法

俺が瞑想にハマったのは、某掲示板のある書き込みがきっかけだった。 「時間があるニートは瞑想やれよ。人生が変わり始めるからマジで」 そんな書き込みだったと思うが、その頃の俺は無職で部屋に引きこもり、時間だけは無限にある状態だったので、興味...
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感情ミキサー

私がそれを見つけた場所はおかしな雑貨屋だった。 三十を目前とした女の趣味が雑貨屋めぐりというのは少し寂しいだろうか? まぁいい。 おかしな雑貨屋のおかしな風貌の店主は私にそれの説明をした。 "感情ミキサー" このミキサーを作動させ...
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メモリースプレー

「おまえでいいか」 と高橋が俺に小さな金属の玉を渡した。 高橋は高校に入ってすぐにできた友達である。 最初はお互い別々のグループに属していたのだが性格や音楽の趣味が合う事が分かって、俺たちはお互い一番仲がいい友達になった。 そんな高...
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おばあちゃんの手品エプロン

私のおばあちゃんのエプロンは手品エプロンだ。 料理をしている時以外でもいつもエプロンをしていたおばあちゃんに私が 「おばあちゃん、手品してー」 と言うとおばあちゃんはにっこり笑って「じゃあ目をつむって」と言うのだった。 私が言う通り...
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内定温泉

なかなか内定を獲得できない俺の元に、同じく就活で苦戦している友人から「温泉に行かないか」と誘いが来た。 友人曰く「入ると内定が出る温泉」というものがあるらしい。 「アホか。そんな温泉があるかよ」 「まぁ、息抜きも兼ねてってことで」 ...
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炬燵の底

それはある冬休みの出来事でした。 僕は東京から車で3時間の場所にあるおじいちゃんとおばあちゃんの家にやってきていました。 僕は田舎で過ごす冬休みが好きで、いつも楽しみにしていました。 その日は、お母さんとお父さん、おじいちゃんとおばあ...
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ハッキングカー

「行ってくるよ」 妻と娘に声をかけて家を出た。 家の前に停めてある車に乗り込む。 「頼むよ」 そう声をかけると車は自動的に起動し、会社までの道を走り始めた。 自動運転が普及して、もうだいぶ経つ。 普段ならここで早朝の連絡業務を行...
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薄い隣人

「え、なにここ。めっちゃいいですね!」 俺は部屋に入った瞬間、ここだな、と思った。 ここに来る前に不動産屋に紹介された物件はどこもなんとな〜くイマイチで、今日もまた部屋は決まらないかなぁと思っていた。 しかし不動産屋は隠し球を持ってい...
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みそ汁みくじ

いま俺は、ある理由でいつもと逆方向のバスに乗っている。 朝、なんとかいつもの時間に家を出てバスに乗った俺は、最寄駅についてそのまま、また戻りのバスに乗った。 こんな時間に家に戻ったら確実に遅刻である。 でも会社に遅刻することより大事な...
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