スマホが突然おかしくなった。
友達から送られてくるメッセージが「どうするの!」「明日大学行く!」といった感じになってしまう。
必ず最後が「!」になってしまっているのだ。
これは、あれだ。まるで母親からのメッセージみたいだ。
母親は「?」の打ち方が分からないらしく、なぜか「ご飯いる!」と最後に「!」を入れてしまう。
そしておかしくなったのはメッセージだけではない。
アラームもおかしいのだ。
七時に設定しているはずなのに、六時半にアラームが鳴る。
まるで母さんに「もう七時よー!」と怒られて時計を見てみたらまだ全然七時じゃなかった時みたいだ。
さらにカメラロールもやられた。
いつの間にかカメラロールに撮った覚えのない猫や花の画像が大量に追加されている。
一体なんなんだ、これは!?
おかしなスマホを駆使してインターネットで調べてみると、どうやらこれは「スマホカーチャン病」と呼ばれる症状らしい。
スマホが母親のものっぽくなってしまうバグ。
直すにはどうしたらいいのか?
まずひとつは初期化らしい。
スマホを完全に工場出荷状態に戻す。
しかしこれをやってしまうと様々なデータが消えてしまうそうなのでできれば避けたい。
もう一つの解決法は「とにかくスマホをたくさん見ること」らしい。
母親は帰省してすぐはあれやこれやとテンション高く世話を焼いたりノンストップで話したりするが、しばらくすると一緒に暮らしていた時のように普通になる。
それと同じでスマホカーチャン病に陥ってしまったスマホもたくさんいじってやることで正常に戻るらしい。
さっそく僕はスマホをたくさん見ることにした。特に用がない時でもスマホをいじり倒す。
カーチャン病の症状は出続けていたが、構わず辛抱強くスマホをいじっていると、次第に症状が和らいできた。
そして一週間ほど経ったある日、とうとうスマホが正常に戻ったのである!
「やった……!」
僕は長かった戦いを勝ち抜き、思わず歓喜の雄叫びを上げた。
翌朝。
僕はスマホを開けた瞬間、悲鳴を上げた。
メッセンジャーアプリやSNSアプリを始め、多くのアプリが使えなくなっていたのだ。
な、何が起きているんだ!?
さらにはスマホに設定しておいたパスワードも変更されている。
ん……?
もしや、これは。
僕は試しに自分の誕生日をパスワードとして入力してみた。
するとパスワードが解除された。
やっぱり……!
僕はスマホカーチャン病を調べていた時に、この症状についての記述を見かけていたのだ。
間違いない。
僕のスマホは「スマホトーチャン病」にかかってしまったようだ。
この病気にかかると難しいアプリは使えなくなってしまう。
さらにパスワードを覚えられないので、覚えやすい誕生日になってしまうのだ。
僕はスマホを持ちながら頭を抱えた。
今度こそダメかもしれない。
スマホトーチャン病の対処法が書かれたページにはこう書いてあったのだ。
「スマホトーチャン病は頑固でどうやっても直らないので、おとなしく初期化しましょう」
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