まぶたの裏に夜景を貼り付けることができるらしい。
好きな景色を見ながら眠りにつけるということで、好評なサービスのようだ。
羊を貼り付ける人なんかもいるらしい。
私は、地元の小さな山から見える夜景を貼り付けることにした。
瞼を閉じると、さわさわと風の音まで聞こえてくる。
なるほど、これならよく眠れそうだ。
と、少年が一人立っているのが見えた。
あれは……白石くんだ。
小学校の頃のクラスメイト、白石くん。
白石くんと私は仲が良かったのだが、急に白石くんが学校に来なくなって、先生からは転校したと聞かされた。
でも、何年か後、彼は交通事故で亡くなっていたと知った。
白石くんは身寄りのない子だった。
白石くんは児童保護施設から学校に通っていた。
人間は、忘れられた時にもう一度死ぬと言う。
懐かしい風景を背に立っている彼に、ごめんね、忘れていないよ、と語りかけた。
はっと目を覚ます。
今のは……夢だったのだろうか。
頬を涙が伝っている。
押し入れを探って、小学生の頃の写真を見つけた。
小学二年生の時に行った遠足で、白石くんと同じビニールシートでご飯を食べた時の写真だ。
白石くんの持っているコンビニのおにぎりと、私のおにぎりを交換したっけ。
写真の中でおにぎりを頬張る彼を、私はをしっかりと目に焼き付けた。
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