人間の悲哀を証明書として使える制度が誕生した。
悲哀証明書を提出すると、会社を休むことが出来たり、学校を休むことができたりする。
人間の活動をあらゆる観点から記録する自動ドローンにより実現した制度である。
悲哀証明書は通称「ぴえん証明書」と呼称されている。
ぴえん証明書によってうつ病などの病気判定なども行われるようになってきた。
より重度な悲哀が記録されたぴえん証明書は「ぱおん証明書」などと呼ばれる。
「ぴえん超えてぱおん」という若者言葉を元にした造語である。
ぱおん証明書を取得すると無条件で生活保護などのセーフティネットを利用することができる。
それ故に嘘を付いてぱおん証明書を取得しようと考える人間も出てきた。
そんな人々を、ぱおん証明書をもじって虚”像”を作り出す人間ということで”きょぞる”といった単語も作られたのだった。
私がまとめ上げた記事を印刷して渡すと課長は「ん」とだけ言ってそれを受け取った。
「課長」
私は課長に対し、もう一枚の書類を提出した。ぴえん証明書である。
これは私が自作したものである。
公的な書類ではないが、待遇検討書類として扱われるべきものだ。
しかし私の作ったぴえん証明書を受け取った課長は「は? おまえがぴえん証明書とか、笑わせるな」と言いながらそれを破いた。
私は自席に戻ってパソコンに向かった。
自分の端末からSNSサイトにアクセスする。
そして私たちアンドロイドたちが密かに作っているSNSサイトに今の対応についての投稿をしようと文章を打った。
このサイトは人間にはアクセスできない。だから人間はまだ気づいていない。
アンドロイドたちの間で、あるハッシュタグが流行っているのを。
それは私たちの決意の表明だ。
私は先ほどの投稿に「#ぴえん超えてぱおんからのむほん」というハッシュタグをつけて投稿ボタンを押した。
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