タスクローソク

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 私には、どうもタスクをおろそかにしてしまう癖があるらしい。

 やるべきことを後回しにしすぎるのだ。

 そして、やらなきゃなと思っている間に忘れてしまったりする。

 そんな私に、友人が「いいサービスがあるよ」と、あるお店を教えてくれた。

「そのお店は”タスクローソク”を作れるお店なの。まぁ、まずはお店に行ってみてごらん」

 私は友人に紹介されたお店にやってきた。

 店員さんがタスクローソクについて説明してくれる。

「お客様からヒアリングした、やるべきことについてのろうそくを作って火を灯します。ろうがなくなって消えてしまうと、タスクを完全に忘れてしまいます。ろうが溶けるまでがそのタスクのリミット、というわけです」

「でも、いつの間にか消えて忘れてしまったら困るんですが……」

「ろうが少なくなってくると、自然と”やらなきゃ”と焦るようになっています。さらに、こちらから定期的にろうそくの写真をお送りしますので、それを見ながらタスクを進めていただければ、と思います」

 私はとりあえず何本かタスクローソクを作ってみることにした。

 換気扇の掃除や排水口の掃除など。

 まぁ最悪忘れてしまっても仕方がない、で済むものである。

 とはいえ、こうしている間にもろうそくが減っていっていると思うとなんだか焦ってくる。

 やらなきゃなぁと思いつつ、私は日々の雑務を言い訳にしてタスクをこなせなかった。

 送られてきた写真のろうそくは、随分短くなっている。

 よし、明日こそはやるぞ!

 そう決意した私は、いや、と思い直した。

 今だ!

 今やろう!

 もうすでに寝る時間だったが、私は猛スピードで換気扇の掃除と排水口の掃除をこなした。

 やればできるもんだなぁ……!

 また面倒くさいタスクのろうそくを作ってもらおう、と思いながら私は眠りについた。

 翌朝。

 テレビのニュースを見て、驚いた。

 あのタスクローソクのお店が映っていたのである。

 ただし、変わり果てた姿で、だったが。

 テレビの中のレポーターが原稿を読み上げる。

「昨夜遅く、このローソク専門店から火が上がり、建物が全焼しました。なお、店の主人は自宅にいて無事だったとのことです」

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