海際の民宿に泊まり、私は「幽霊クルージング」に参加した。
なんでも、夜になったらフェリーに乗って海にいる幽霊を見に行くらしい。
参加できるのは幽霊が見える人限定だそうだ。
夜になり、私はフェリーに乗り込んだ。
フェリーは目的の場所に着くと「こちらが幽霊の集まる場所でございます」とアナウンスした。
海面を見てみると、なるほど、たくさんの幽霊が海の上に漂っていた。
一体何をしているのだろう。
私の経験上、幽霊といっても目的もなくその場にいることは少ない。
フェリーの乗客の若い男の子が、隣にいる女の子に向かって「あそこにいるぜ」とつぶやいているのが聞こえた。
女の子は短い悲鳴をもらして男の子に体を寄せるが、男の子が指差している方向はまったくの見当違いだった。
他にも「自称霊能力者」がとんちんかんなことをテレビのカメラに言っていたりした。
見える人限定とのことだったが、どうやらそうでもないらしい。
本当に限定してしまうとツアーの参加者が少なすぎるのだろう。
私はフェリーに乗って民宿まで戻ってきた。
あの幽霊たちはずっとあそこにいるのかなぁ、なんて思いながら民宿の窓を開ける。
すると、海の方からぞろぞろと幽霊たちが帰ってくるのが見えた。
ははぁ、やはり。彼らは仕事としてあそこにいるのだ。
幽霊たちに帰る家があってよかったな、と思いながら私は窓を閉めて部屋に戻った。
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