あるところに、鍵説得人の男がいた。
男は鍵に語りかけ、説得することで解錠する。
昔の鍵は説得や泣き落としで開けられるのだが、最新のものは無機質でダメらしい。
逆に時代が古ければ古いほど開けやすいそうだ。
男は今、ある家の金庫の説得にあたっていた。
金庫はかなり古かったが、頑固なようで男は苦戦していた。
男は、金庫の持ち主である家族に「数日泊めていただけませんか」と願い出た。
同じ部屋で寝泊まりすることで、金庫を落とそうと考えたのである。
そんな日々を過ごすうちに、男はその金庫の持ち主である家の娘と恋仲になった。
二人の仲は親密になり、二人は結婚した。
男は娘に「結局、金庫は開けられなかったけどな」と悔しそうに言った。
すると娘が、あっと短い声をあげた。
娘は金庫を指差した。
なんと、あれだけ何をやっても開かなかった金庫が開いていたのである。
金庫の中には、ちょうど親族からのご祝儀くらいの金額が入っていた。
男と娘はありがたくそのご祝儀を頂戴したということである。
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