さすらうマネキン

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 最近、私の勤めるお店でおかしなことが起きている。

 ある日、私が出勤すると、一番目立つ場所に置いておいたマネキンの服が変わっていた。

 同僚に「誰か変えました?」と聞いたけれど、誰も変えていないという。

 そこで監視カメラをチェックしてみると、なんとマネキンが自分で着替えていたのである。

 驚いたけれど、そのコーディネートが結構いいので、そのままにしておくことにした。

 すると、その服の売上が大幅にアップしたのである。

 それから私たちはマネキンに自分でコーディネートを考えてもらうことにした。

 マネキンの考えるコーディネートはいつも人気だった。

 しかし、それからしばらくして。

 朝、出勤するとマネキンがなくなっていた。

 どこに行ってしまったのか?

 探し回ると、他の婦人服売り場にマネキンは立っていた。

 その売り場の店員さんに「誰が運んだんですか?」と聞いたけれど、誰も運んでいないという。

 そこでまた監視カメラをチェックしてみると、なんとマネキンが自分で移動してきていた。

 マネキンを元に戻そうとするけれど、まるで根が生えたように動かない。

 仕方なくマネキンはそのままにしておくことにした。

 その後も、マネキンは色々な売り場を転々とした。

 どうやら、売り場の工夫を頑張っているお店にマネキンはやってくるらしい。

 それから私たちは、マネキンに来てもらえるように頑張って売り場の改善をした。

 その結果、ワンフロア全店の売上が上がったのである。

 肝心のマネキンはというと、いつの間にかいなくなっていた。

 そういえば、あのマネキンはいつからうちの店にあったのだろうか。

 あのマネキンは、今もどこかをさすらっているのかもしれない。

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