営業先から出た僕は、誰も見ていないことを確認して密かにガッツポーズをとった。
今の商談はかなり手応えがあったぞ。
そうだ、測定してみよう。
僕は一人ゲームセンターへ向かった。
ゲームセンター内にあるパンチマシーンの前に立つ。
このパンチマシーンは、パンチをすることで測定したいことの手応えを教えてくれるのだ。
「よし、いくぞ」
ワイシャツの袖をまくりあげ、思い切りパンチする。
スコアは89。
100点満点で、これは高得点だ。
間違いない、さっきの商談はうまくいく。
そう確信してゲームセンターを後にした僕は、次の日に営業先から受注の連絡をもらった。
数日後。
コンパで知り合った女性とのデートの後、僕はまたゲームセンターにやってきた。
女性との将来をパンチマシーンで測ってみることにする。
ほろ酔い気分でパンチをすると、スコアはなんと……3だった。
あれ、手応えはあったんだけどなぁ……。
おかしいなと思いつつ、女性と連絡を取り続けた僕は、見事女性と付き合うことができた。
あの時はパンチマシーンが壊れていたのだろう。
そう考えた僕は、いまや彼女となった女性を連れてまたゲームセンターにやってきた。
彼女に例のパンチマシーンを紹介すると「え〜面白そう! やってみようかな」と彼女ははしゃいだ。
「なにを測るの?」
「え〜……あなたとの未来、かな」
彼女はそんな可愛いことを言ってパンチマシーンにパンチをした。
スコアは……96!
す、すごい!
周りで見物していた人たちからどよめきが起こる。
騒ぎを聞きつけてやってきた店員さんに「このパンチマシーン、いつ直ったんですか?」と話しかける。
すると店員さんは「え? 別に壊れてませんけど」と不思議そうな顔をした。
数カ月後、僕はあのパンチマシーンが叩き出した数値の意味を知った。
順調に交際を進め彼女と結婚をすることになったのだが、彼女がここで式をあげたいと言った式場の予約金だけ振り込んだところで、彼女がいなくなったのである。
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