安いよセミ

ショートショート作品
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 あるところに八百屋さんがおりました。

 ある夏の日、八百屋さんの店先の柱に、一匹のセミがとまりました。

 そのセミは「ヤスイヨー」と鳴き始めました。

 おかしなセミだなぁと思っていると、その声につられて買い物客がやってきました。

 八百屋さんは喜びました。

 とはいえ、野菜を買う人の数がものすごく増えるわけではありません。

 みんな「安いなぁ」なんて言いながら結局何も買わずに行ってしまうことも多かったのです。

 そこで八百屋さんは試しに店先でかき氷を売ってみることにしました。

 するとこれが大当たり。

 かき氷が売れる売れる。

 セミは他のセミと同じように一週間くらいで死んでしまいましたが、セミのおかげでその夏の八百屋さんの売上は過去最高を記録したそうです。

 翌年。

 その年も、八百屋さんの店先にセミがとまりました。

「あ、あのセミだ!」

 セミに気づいた八百屋さんは急いでかき氷を作る機械の準備を始めました。

 すると、セミが鳴き始めました。

「タカイヨー」

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