ある男が資産家にアドバイスを求めていた。
「私はどうしても貯金ができないんです。どうしたらいいですか」
すると資産家が答えた。
「それはお金の出口があるからです。出口を塞ぎましょう」
もちろん”お金の出口”というのは比喩表現で、無駄遣いをやめなさいという意味だったのだが、男は馬鹿正直にそのアドバイスを捉え、家の隙間などをすべてガムテープで塞いでしまった。
資産家はさらに男にアドバイスした。
「お金を好きになりましょう」
これもまたもちろん比喩表現だったのが、男はまたしても真に受け、お金に「愛しているよ」と毎日声をかけた。
「お金に旅をさせましょう」
資産家のそのアドバイスは、お金は貯めるばかりではなく投資などをしようというものだったが、男は本当にお金を旅に出してしまった。
新幹線の座席を取ってやり、その座席になけなしの金を置いた男は「言ってらっしゃい。気をつけて」とお金を見送った。
「好きなことをやりましょう。お金はあとからついてきます」
資産家にそんなアドバイスをもらった男は好きなことをボランティアで行った。
ボランティアなので当然お金は稼げず、生活は困窮していったが、男は充実した気持ちを味わっていた。
そんなある日、男が自宅までの道を歩いていると、男の後ろをお金がぞろぞろついてきた。
男はそんなお金たちを引き連れて自宅に帰った。
自宅に着いた男はついてきたお金たちを抱きしめると「君たちみんな大好きだよ」と言った。
その時、呼び鈴が鳴った。
男が玄関の扉を開けると、そこにあの日旅に出したお金がいた。
そのお金は旅を経てたくましく成長し、量が増えて戻ってきたのであった。
そんなことを繰り返した男は、本物のお金持ちになった。
男はかつての資産家のように「どうすればお金持ちになれますか」と質問を受けた。
男はこれまで自分がやってきたことをそのままアドバイスした。
「まずお金の出口をなくすんです。そしてお金を愛してください。愛した後はお金を旅に出しましょう。そうしたら後は好きなことをただやるだけです。お金は後からついてきますから」
そんな男のアドバイスを聞いた人々は、アドバイスをそれぞれ曲解して捉えてしまい、素直に従うものはいなかったのであった。
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