工芸品の背後

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 私はある古民家カフェに入った。

 なんだか雰囲気の良いお店で、気になったのだ。

 頼んだプレートランチが運ばれてくる。

「おまたせしました」

 店員さんがそう言ってテーブルにプレートを置いた瞬間、プレートの背後にぼぉっと女性の霊が浮かび上がった。

「うわぁあ!」

 私は思わず叫んでしまった。すると店員さんは「お客さん、もしかして見える人ですか」と私に聞いた。

「え、えぇ」

「実はですね……このお店で使っている食器なんかは全部一点物の工芸品で、そういった工芸品には魂が宿ると言われているんですよ。それで、そのプレートを作った方はもう亡くなっていまして、こうして出る、というわけなんです」

「そうなんですか……」

「他のお皿に変えますね」

 店員さんはそう言ったが私は断った。なんとなく、そうするとこの女性の霊が悲しむような気がしたのだ。

 ちょっと霊が気になったけれど、私はランチを食べた。

 ランチは美味しかった。

 食べ終わり、「美味しかった」とつぶやくと女性の霊がにっこりと笑った。

 悪い霊じゃないんだろうな。

 お会計を済ませると、店員さんが「よければまた来てください」と微笑んだ。

「はい」と返事をして店を出る。

 店を出てからふと店の方を振り返り、建物の上に目線をやった私はまた叫び声をあげた。

「わぁあああ!」

 店の建物の上から巨大な男の人が私を見ていたのだ。

 店員さんが店の中から出てきた言った。

「実はこの古民家、有名な建築士の方の設計で、その方はもう亡くなってまして……」

 なるほど、そういうことだったのか。

「居心地良かったです」

 建物の上の男の人に言うと、男の人はにっこりと笑った。

 また来よう、と思いながら私は店を後にした。

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