「勝者、山崎さん!」
僕は二回戦を突破した。
僕は今、怪談を語るコンテストに参加している。
あるビルの前を通りかかった時、コンテストの看板を見つけてフラッと入ってみたのである。
元々怪談は好きだったので自信があったのだ。
僕はそのまま順調に勝ち進み、決勝に進んだ。
決勝で僕はとっておきの都市伝説の話を披露した。
観客が悲鳴を上げる。
僕は見事その話で優勝した。
賞状が贈られる。こんな物ももらえるのか。
「おめでとうございます!」
会場に拍手が巻き起こったので、僕は手を振って答えた。
と、その瞬間、バチッと会場の照明が消えた。
気がつくと僕は真っ暗なビルの一室に一人で立っていた。
何も見えない暗闇の中、手探りで扉を見つけてビルを出る。
道に出てから振り返ると、そこには先ほどのビルがあった。
そういえば、このビルがあった場所では昔大規模な火災があったはずだ。
なるほど、だから他の参加者の話が怖くなかったのか。
会場にいた彼ら彼女らにとって幽霊などもはや怖いものではないから、日常でよくある話、みたいな話しか出てこなかったのだ。
新しい怪談話を仕入れられたなと思い、僕はその場でブルッと震えてからビルをあとにした。
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