ある神社があった。
その神社は「痛み止め」のご利益がある神社だった。
神社にお参りすると、一時的に痛みに強くなれるのである。
その神社は歯医者さんの近くにあったのでとても繁盛していた。
痛み止めのご利益は、お賽銭の額によって効果が異なるのだった。
歯医者に行きたくない人が来たり予防接種が嫌な子どもが親とやってきたりと参拝客は途切れなかった。
夜中。
さすがにこんな時間には閑散としている神社に、一組の男女がやってきた。
男女はお賽銭箱の前に立つと一万円札を投げ入れた。
それから二人揃って鳥居をくぐって神社の境内から出ると、女性が鍵を取り出し男性に手渡した。
男性はそれを笑顔で受け取ると「荷物は宅配便で送るからね」と言った。
女性が「うん、ありがとう」と笑顔で返す。
それから男女は別々の方向へと去っていった。
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