「にらめっこ線香花火」なるのが発明された。
笑ってしまうと線香花火の火が落ちるのだ。
パーティグッズとして大人気の商品になった。
そんなにらめっこ線香花火を使って、あるテレビ番組が制作された。
「悟りを開いた僧侶対お笑い芸人」と銘打って、にらめっこ線香花火の対決をさせたのである。
実際に番組が制作されたが、僧侶は何をやっても全然笑わない。
お笑い芸人が根を上げ、スタジオでの収録がひと段落した後も笑わない。
テレビクルーが僧侶の姿を追い続けたが、トイレに持ち込んでも、僧侶の線香花火はまだついている。
たくさんのお笑い芸人が僧侶に挑んだが、線香花火の火は落ちなかった。
とうとうスタジオ収録が終わったが、まだ火は落ちなかった。テレビクルーは僧侶の姿をカメラに収め続けた。
僧侶が家に帰ると、線香花火を持っていて手を使えない僧侶に対して、妻が食事を食べさせ始めた。
それでもなお落ちないのである。
定点カメラを設置して、テレビクルーは帰っていった。
一体、いつまで線香花火の火は燃え続けるのか?
しかし終わりはあっさりと訪れた。
食事を終えて、妻が食器を持ち立ち上がる。
正座をしていた妻は足がよろめいて「あらら」と千鳥足になった。
すると、僧侶の持っている線香花火の火がぽとりと落ちたのである。
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