ある地方に出張に行った時のこと。
取引先である、その町の人と海岸を歩いていると、昆布のようなものを養殖しているのが見えた。
私は言った。
「あれは昆布ですか」
すると、町の人は言った。
「あれはズボンです」
「えぇ!?」
「ズボンのボタンをですね、海岸に並べておくんですよ。そうすると、ゴミやら様々な生き物の死骸やらが自動的に寄ってきて、あのようにズボンになるんです。再生可能な社会、とかいいますでしょ? エコにできるズボンということで町全体で推し進めている事業なんです。ズボン以外にも色々試しているんですよ」
「へぇ……」
私は感心しつつ、ズボンの養殖の様子を眺めた。
ん?
「あれは……」
思わず声を出した私に、町の人は「さ、そろそろ行きましょう」と先を促した。
さっき、ズボンの養殖のずっと向こうに、なんとなく白子のようなものが見えたのだが、あれは……。
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