大昔のこと。
この世界には「野生のマント」がいたらしい。
そこらじゅうをマントが飛び回っていて、捕まえて空を飛べたそうだ。
言うことをきかせて、しつけることなんかもできたらしい。
現代でいうところの馬のようなものである。
うまくしつければ、呼ぶとやってくるようになったのだとか。
大昔の人はマントを使って移動をしていたと言われている。
なんとも便利だ。
しかし便利すぎるがゆえに乱獲され、やがて野生のマントはいなくなってしまったのだという。
まだ野生動物の保護なんていう考えのない頃だ、致し方ないことなのだろう。
だが私は、密かに野生のマントが生き残っているらしいとの情報を得て、ある洞窟までやってきた。
薄暗い洞窟を進む。
いた!
マントがうようよと洞窟の天井に張り付いている。
いた、本当にいたんだ。
と、マントたちが一斉に飛び出して、私はマントたちに持ち上げられた。
そのまま洞窟を出る。
空は抜けるような透き通る青で、私はマントの上に乗って空中遊泳を楽しんだ。
こんなに気持ちがいいなんて。
大空を旋回し、洞窟とは違う方向に進み始める。
一向に降りる気配がない。
私はその時になってようやく、自分が捕獲されているのだと気づいた。
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