一年ほど前、あるものが爆発的に流行ったことがある。
それは「人間ジャンプスターター」というものだ。
ジャンプスターターとは、車のバッテリーが切れた時に使うものだが、それを人間用に改良したものだ。
疲れが溜まりすぎ、完全に自分のバッテリーをオフにしてゆっくり休みたいという需要に応えたのが、人間ジャンプスターターである。
ジャンプスターターを持ち歩き、完全に自分のバッテリーをオフにして短時間でもじっくり休む。
そうすると、嘘みたいに疲れが取れるのだ。
そしてジャンプスターターによって起動する。
目が覚めた途端にやる気に溢れている自分に驚く、というわけだ。
しかし、ジャンプスターターの使用はすぐに禁止された。
ジャンプスターターを使った人に、軽微の記憶喪失が見られたからだ。
車は、カーナビの設定などで常に微量の電気を必要としているが、人間も車と同じで記憶の定着には電気がいるらしい。
だから完全にバッテリーをオフにしてしまうのは危険、というわけだ。
ジャンプスターターは急速に廃れていき、いつしか完全にその姿を見なくなった。
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