在宅保育園

ショートショート作品
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 そろそろ時間だ。

「よっちゃ〜ん」

 近所に住む沙織が子供を連れて我が家にやってきた。

 沙織は昔からの友達で、沙織が近所に住んでいたことは私にとって幸運だった。

 子育ての愚痴や不満なんかを気兼ねなく話せる人が近くにいるというのは、育児において大切な要素である。

 それに、沙織に教えてもらった「在宅保育園」のおかげで私は大いに助かっている。

 私は娘を連れて沙織と一緒に我が家のある部屋に行った。

 娘と沙織の子供は誰もいない部屋でキャッキャと楽しそうに遊び始めた。

「在宅保育園」とは、私たちとは別の世界に住む住人による保育サービスである。

 私は昔から霊感が強く、子供が生まれてから霊感は弱まったが、まだぼんやりと見える。

 誰もいないはずの部屋にたくさんの子供と保育士さんらしき人の姿が見える。

 在宅保育園は、こうして様々な家庭に子供と保育士さんの霊がやってくるサービスなのである。

 幽霊に子供を任せるなんて、と言う人もいるが、私自身昔から幽霊に遊んでもらっていたので抵抗なんかない。

 沙織はちょっと話をしてから帰っていった。

 夕方になって、また沙織がやってきた。

 そろそろ保育が終わる時間なのである。

 娘たちが部屋に帰ってきたので、沙織と二人、「おかえり」と出迎えた。

「じゃあね、よっちゃん」

 沙織が子供と一緒に手を振る

「バイバイ」

 私も娘と一緒に手を振る。

 沙織が玄関を出ると、沙織と子供の姿はぼんやりと薄くなり、やがて、ふ、と透明になって見えなくなった。

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