耳催眠術士という人がいるらしい。
耳垢に催眠術をかけて、すっきりさせてくれるのだ。
僕は、その耳催眠術士さんの元に行ってみることにした。
耳催眠術士さんは女性で、なんだか僕はどぎまぎしてしまった。
耳催眠術士さんは僕の耳元で「出ていってください」「出ていってください」と繰り返した。
なんとも言えぬ快感があって、耳垢が取れていく感覚があった。
気持ちいい……。
ごっそり耳垢が取れた気がする。
しばらくしてから、僕はまた耳催眠術士さんのところに行った。
頻度は月に一回くらいでいいと言われていたが、どうしても我慢できなくなったのである。
しかし耳催眠術士さんは「ダメです、施術はできません」と施術を断った。
僕は本当のことを告白することにした。
「すみません、あなたのことが好きになってしまったんです!」
僕がそういうと、耳催眠術士さんは言った。
「わかりました。こちらを見てください」
僕が耳催眠術士さんの目を見ると、耳催眠術士さんは言った。
「出ていってください」
それから、どうやって家に帰ったのか、記憶がない。
もう一度耳催眠術士さんに会いたいと思うのだが、耳催眠術士さんのいた場所をどうしても思い出せないのだ。
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