ショートショート作品

行きつけのふりかけ

 私は今日も行きつけの定食屋に向かった。  ここの料理はすごく美味しく、そして妙に懐かしい味がするのだ。  店に通い続けるうちに女将さんと仲良くなった私は、女将さんに聞いてみた。 「ここの料理はどうしてこんなに懐か...
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鳴り雪の話

 私の生まれた地域には「鳴り雪」というものが降る。  降るのは一年に一回らしい。  鳴り雪が降った日、私は弟と二人で家の前の駐車場に出た。  柔らかい雪を踏むとメロディが鳴った。  弟と私は駐車場を駆け回っ...
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冷戦の香り

 最初にその香りに気づいたのはまだ小さい頃だった。  なんだろう、この匂い。そう思うと、決まって両親が喧嘩しているのだ。  後に分かったことだが、それは喧嘩をしている人や仲の悪い人たちが互いに発する匂いだった。  ...
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立ち寄った島

 ある男が海釣りに行った。  帰りの船上で、男は見慣れない島を見つけた。  男は島に船を寄せ、その島に上陸してみた。  やけに地面が柔らかい。  それに、熱い。  なんだこの島は、と男はいぶかしんだ...
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夢営業

 最近、なんとなくおかしい。  欲しくもないものが欲しくなるのだ。  もしかしたら夢営業をかけられているのかも。  そんな都市伝説があるのだ。  夢に語りかける営業が存在するというのである。 ...
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厄災のナイフ

 あるナイフの話をしよう。  そのナイフは「厄災のナイフ」と呼ばれていた。  厄災のナイフに傷つけられるとシリアルキラーになってしまう。  さらにそのシリアルキラーに傷つけられた人間もシリアルキラーになるのだ。 ...
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帰巣ドリンク

 しこたま飲んだ後、私は駅前で帰巣ドリンクを買った。  これを飲むと、どれだけ酔っ払っていても家まで勝手に帰れる。  しかし瞬間移動するわけではない。  自分の足で歩いて帰るのだ。  酩酊して意識を失ってい...
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踊る衣服たち

 友だちの家にやってきた。  買ってきたお菓子の袋を開けようとすると、友だちが「どうしようかな、やめようかな」と言った。 「珍しいな」  僕が言うと友だちは「節制しようと思ってね」と笑った。  それから二人...
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風鈴の音に誘われる

 幼い頃、母方の田舎によく遊びに行った。  ある夏の日、森に行って一人で虫取りをしていると、どこかから「チリンチリン」という音が聞こえてきた。  見ると、なんと風鈴が飛んでいる。  僕はそれを虫取り網で捕まえて家に...
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天秤貯金箱

 天秤貯金箱なるものを買った。  天秤とセットの貯金箱である。  買いたい物を念じながら貯金箱を天秤に乗せると、普通は貯金箱自体の重みで貯金箱側が下がるはずなのに、そうはならず貯金箱を置いていない側が下がるのだ。 ...
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