夢営業

ショートショート作品
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 最近、なんとなくおかしい。

 欲しくもないものが欲しくなるのだ。

 もしかしたら夢営業をかけられているのかも。

 そんな都市伝説があるのだ。

 夢に語りかける営業が存在するというのである。

 ある日、僕は明晰夢を見た。

 タレ目で涙ボクロが特徴的な女性が宝石を買えと言う。

 これから価値が上がるだの、何だの。

「いらないって!」

 僕が強い言葉で言うと、女性が言った。

「買っていただけないならここから飛び降ります」

 いつのまにか僕たちは崖に立っていた。

「本当に飛び降りますよ」

 女性が脅すように言ってくる。

「好きにしてくれ」

 僕がそう言うと、女性は「ありがとうございました……」と言って、本当に飛び降りてしまった。

「わぁ!」

 僕は思わずそう叫んで目を覚ました。

 まったく、寝覚めの悪い夢だ。

 と、横で寝ている妻が「いらないってば!!!」と叫んだ。

 どうしたのか、と妻を起こすと、夢を見ていたらしい。

 営業をかけられる夢で、その営業はパラシュートでやってきたそうだ。

 僕は妻に尋ねた。

「その営業は涙ボクロがなかったか?」

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