ショートショート作品

公園の自転車

 あの自転車、まだあるかな。  久しぶりに実家に帰省した私はそんなことを思いながらある公園に向かった。  その公園は近所にある小さな公園で、まだ子どもだった頃の私はどこに行くにもその公園の側を通っていた。  公園に...
ショートショート作品

売れ残りの天秤

 私が店番をしていると、男の人が一人やってきた。  男の人はぶらぶらと商品を見て回ったあと、天秤が置いているコーナーで足を止めた。  じーっと天秤を眺めている男の人に、私は声をかけた。 「あ、その天秤、普通に使うん...
ショートショート作品

香りのお便り

 一人暮らしをしている友達の家で遊んでいると、ピンポーンと呼び鈴が鳴った。  玄関を開けてから何かを受け取った友達は「やっと届いた!」と何やら歓声をあげた。 「何が届いたの?」 「これこれ」  そう言って友...
ショートショート作品

忘れクジラ

 忘れたい記憶を忘れさせてくれるクジラがいるらしい。  言うなればクジラによる強制的な記憶喪失である。  私はそのクジラが現れるという海岸にやってきた。  そこには私以外にもたくさんの人が集まっていた。  ...
ショートショート作品

恋人やまびこ

『私はある現象を調査している。  ある現象とは、"やまびこ"だ。  普通、やまびことはやっほーと言ったらやっほーと返ってくるものである。  しかしある山では違っている。  やっほー、あるいは何かしらの言葉を...
ショートショート作品

うふふ皿

 ある日、まったくの偶然でまったく新しい皿が焼けた。  焼き上がった皿に塗料を塗っていたら、皿から「ふふ」と人間の声のようなものが聞こえたのである。  普通、皿はキュッと鳴るが、この皿は「ふふ」と鳴る。  試しに売...
ショートショート作品

地ビールが出た!

 ある日、庭に出て庭いじりをしていたら、地面からピューっとビールが出た。  色合いや匂いがビールなので、ぺろりと舐めてみたところ、完全にビールだった。  ビールは次々にあふれ出てくる。  ど、どうしよう!? ...
ショートショート作品

鈴の音の回想

 思い出の瞬間を封じ込めておける鈴があると聞いた。  その鈴は、封じ込めておきたい思い出に出会うまで鳴らしてはならない。  何か心に留めておきたいことが会った時、初めて鈴の音を鳴らすのだ。  すると、その鈴の音を聞...
ショートショート作品

海スプリンクラー

 私は丘の上にあるコヤギ博士の研究所へやってきた。  コヤギ博士は研究所の前で私を待ち構えていた。 「これを見たまえ!」  博士の指差す先には、スプリンクラーのようなものがあった。  コヤギ博士が何やらスイ...
ショートショート作品

風化のバラ園

 私はいつの間にかバラが咲き誇る丘にいた。 「こんにちは」  作業着姿の男の人が話しかけてくる。 「あのぉ、ここは……?」 「バラ園です。ただし、ここに咲いているバラは特殊な品種でして、風化した思いや物など...
タイトルとURLをコピーしました