私は丘の上にあるコヤギ博士の研究所へやってきた。
コヤギ博士は研究所の前で私を待ち構えていた。
「これを見たまえ!」
博士の指差す先には、スプリンクラーのようなものがあった。
コヤギ博士が何やらスイッチを押す。
すると、放射線状に水が飛び出した。
そして地面についた水が青く光った。
「あれは海だよ」
「海?」
確かに飛び散った水は青く輝いている。
しかし……。
「青い水でしょう?」
私が正直な感想を述べた、その瞬間。
青い水から、ぴちゃっと魚が跳ねた。
「えぇ!?」
「ふふふ、言っただろう。これは海なのだよ。海スプリンクラーは海を放射できる発明なのだ」
博士は満足そうに笑った。
数日後。
またコヤギ博士の研究所に行ってみると、なぜか博士はがっくりと肩を落としていた。
「何かあったんですか?」
「いやぁ、海スプリンクラーがね……。見たまえ」
見ると、この前は青い海だった場所が、砂漠のようになっている。
「どうしちゃったんですか、これ」
「海スプリンクラーは海を放射している、なんて言ったが、実は違うんだ。ただの水をまいて、そこに映像を投影しているにすぎないんだよ。海の座標に合わせた、人工衛星からの映像をね。だがその座標を特定する装置が壊れたようで、こんな風に海とは違う全然別の場所が映し出されるようになったんだ」
博士はそう言いながらスプリンクラーのスイッチを押し、水に映っている砂漠の映像を消した。
私はその瞬間、あるものを見た。
「あ!」
「どうかしたかね?」
「博士、あの映像はどこまで映せるんですか?」
「どこまで、というと?」
「つまり、範囲です」
「範囲……? 地球上ならどんな場所でも投影できるが」
「本当にそれだけですか?」
「えぇ?」
「もしかして、以前に、砂漠ではなく黒い何もない空間が映し出された、なんてことはなかったですか?」
「おぉ、よく分かったね。確かにあったよ」
「やっぱり……。博士、あれは地球以外の場所を映しているかもしれませんよ」
「えぇ?」
「さっき、見たんです。水に投影された砂漠の映像が消える瞬間、ずっと向こうの方でタコのようなものが手を振っているのを……」
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