風化のバラ園

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 私はいつの間にかバラが咲き誇る丘にいた。

「こんにちは」

 作業着姿の男の人が話しかけてくる。

「あのぉ、ここは……?」

「バラ園です。ただし、ここに咲いているバラは特殊な品種でして、風化した思いや物などによってできた風で育つのです。別の場所で水や日光を与えても育たない、ここでしか咲かないバラなのです」

「へぇ……」

「どうですか、よろしければ手伝ってくださいませんか」

「え?」

 そうか。

 その時、私はようやく気づいた。

 ここは、普通の人間には来られない場所なんだ。

 それから私は、このバラ園で働いた。

 咲いたバラは時々天使が摘みにやってくる。

 天国の庭に植え替えるのだそうだ。

 天国はどんなところだろう。

 私は風からバラに姿を変えて、その時を待っている。

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