ショートショート作品

門の女

 新しく引っ越すことになったアパートの大家さんに挨拶をした時のこと。  そのアパートはメゾネットタイプの物件で縦に長い構造をしており、各世帯の出口ドアには簡易な門が設置されている。  そんなアパートの端にある部屋に大家さん...
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鼻風おじいさん

 僕の通っている小学校の近くには公園がある。  そこの公園にあるベンチにはいつも「鼻風おじいさん」が座っている。  そのおじいさんを笑わせるとおじいさんが「フォッ」と声を上げて笑い、その鼻から小さなつむじ風が飛び出す。 ...
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アドバルーンマン

 私の村にはアドバルーンマンがいる。  アドバルーンとは大きな風船に広告の垂れ幕をくくりつけて飛ばす広告形態のことでその昔は都市部でも見られたそうだが、最近では高い建物が多くなって広告効果が薄れたのでほとんど見られなくなったそうだ...
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夕涼み街路灯

 地球全体で温暖化が進む中、日本である発明がなされそこら中にあるものが建った。  それは夕涼み街路灯と呼ばれるもので、それは見た目は普通の街路灯に見えた。  しかしその街路灯の照明部分にはあるフィルターが設置されており、街...
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ヴァンパイアのため息

 ある日、世界中でおかしな気象現象が観測された。  それは気象現象としては"風"なのだが、ある特異な特徴を持つ。  その風が吹き抜けた場所にいた人間はもれなく貧血症状を訴えたというのだ。  突然突風のような強い風が...
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覗きジュエル

 宝石店で指輪を見せてもらっていると、なんだか不思議な宝石があることに気がついた。  ダイヤモンドに似ているが、書いてある名前が違う。 「これはなんですか?」  僕がそう聞くと、店員さんは一瞬「しまった」と...
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攪拌ボールのある部屋

 結婚をして新居を探しに来た僕と妻は、不動産屋さんが見せてくれた物件資料を見てからなんとも言えない表情で見つめ合った。  不動産屋さんはいくつも物件資料を見せてくれたのだけれど、正直どれもパッとしないのだ。 「あとは……こ...
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うろこ雲釣り

 ある日、私が釣りをしていると、頭上にうろこ雲が浮かんでいた。  本物の魚のうろこのように空にたなびく白い雲を見ていると、本当に空に巨大な魚でも泳いでいるんじゃないかという気持ちになってくる。  その日の釣果はゼロ。それな...
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物忘れパジャマ

 大学の大教室でため息をついていたら同じゼミの藍美が声をかけてくれた。 「どうしたの。目が死んでる」 「いやぁ、なんだか寝覚めが悪くて」 「ふぅん」 「私、いっつも朝、目が覚めると昨日あった嫌なことを思い出...
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結婚式のお守り

 夫と二人で準備を進めてきた結婚式がようやく終わった。  幼い頃に夢見ていた結婚式はただひらすら幸せなだけだったけれど、実際にやってみるとそれはそれは大変だった。  会場選びから招待状作り、余興の決定など。  やる...
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