ショートショート作品

キャリアアップル

「それでは皆さんにはこれからキャリアアップルを植えていただきます」  新卒で入社した会社で人事部の田中さんに突然そんなことを言われた。  新人研修が終わって、これからいよいよ仮配属先での仕事が始まるぞ、という時期にである。...
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河川敷の女

 その日は天気の良い日で星もきれいに見えた。  俺はベランダに設置した天体望遠鏡を覗いてしばらく美しい星々に見惚れていたのだが、ふと視界の隅に何か映ったような気がして接眼レンズから目を離した。 「ん……?」  俺は...
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交差点の侵食

 僕の家は交差点の角に立っている。  川沿いを走る国道のT字路の一角が我が家なのだが、どうも僕はこの交差点に違和感を覚えている。  この交差点、僕がまだ幼い頃からずっとあるわけだけれど、どうも少しずつ大きくなってきている気...
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ウソ茸の効能

  私は小さな会社に勤めている。  その会社の面倒くさいところは、社内行事が結構多いところだ。  この秋も、社員旅行でキノコ狩りに行った。  ぶつくさ言いながら参加したわけだけれど、社員旅行というのは行ってしまうと...
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潮の雨が降る

 私はある島国の海際で古い書物を読んでいた。  その書物にはある不思議な記録が記されていた。  それは、船の乗組員が体験した「塩の雨」についての記録である。  書物の筆者はある船の乗組員だった。  その男は...
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席取りのサクラさん

 僕は会社の近くにある公園に先輩社員の三浦さんと一緒にやってきた。  昼食を食べるためでも、ましてやサボる為でもない。  れっきとした業務の一環……と三浦さんは言っている。 「さてと、今年はどのあたりにしようかな」...
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消し墨の文

 昇降口の下駄箱を開けると、一通の手紙が入っていた。  なんだろうと思い封を開けると、それはどうやらクラスメイトの葉月さんからの手紙のようだった。  僕は内心かなりドキドキしながら手紙の中身を読んだ。 「三...
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揉み課

「じゃあこの話、よく揉んどいてくれ」 会議の終わり間際、課長は僕と伊藤先輩に向かってそう言った。 「はい」と二人、返事をして会議室を出る。 「早速行こうか」と伊藤先輩が言ったので、僕たちは三階フロアに上がっ...
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涙コロン

 自分が人とは違うことに気づいたのは幼稚園に入った時だった。  初めて家以外の場所で知らない人たちに囲まれて過ごすことになった私は心細さにいつも泣いていた。  そして私が泣くと、男の子がはやし立てるのだ。 ...
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星空包装紙

   友人からフィンランドのお土産をもらった時、私は正直お土産の中身よりも包装紙に興奮した。 「え、何これ……!」  包装を解いた私は思わず驚きの声をあげた。  お土産を包んでいた包装紙、その裏側に星空がプリ...
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