ある日突然、世界中で恐ろしい現象が確認された。
それは「ゴリラ芸雨」と呼ばれる現象である。
気象現象としての雨は伴わないのだが、似た単語として「ゲリラ豪雨」があることからそう呼ばれている。
局地的に発生するゴリラ芸雨に巻き込まれると、本人にその気がなくても強制的にゴリラの真似をしてしまう。
あ、ゴリラ芸雨だ! と思った時にはすでに遅く、一心不乱にゴリラの真似をしてしまう。
局地的にそこにいる人々が皆「ウホ!」「オホホホ!」「カポカポカポ」なんて言いながら迫真のゴリラ芸に走るのだ。
バリバリ仕事のできそうなビジネスマンも、綺麗なお姉さんも、杖をついたおじいさんおばあさんも子供たちもみんなゴリラの真似を始める。
恐ろしい現象である。
ゲリラ豪雨と違って、雨ではないので建物の中にいてもゴリラ芸雨は避けられない。
世界中の学者がゴリラ芸雨の原因と対処法について検証したが、有効な結果は得られなかった。
仕方なく人々は対症療法的にカバンやバックの中に黄色い筒を持ち歩くようになった。
それは折りたたみ傘……ではない。
バナナケースである。
ゴリラ芸雨によってゴリラの真似が始まってしまっても、バナナを食べていれさえすればある程度はおとなしいのである。
コメント