海難事故に見舞われた私は無人島に漂着した。
島は歩いて三十分ぐらいで一周できる小さな島だった。
島を探索した私は島の真ん中にある山の頂上でお椀型の岩を発見した。
そのお椀型の岩の上に、サイコロが転がっていた。
「誰か人がいたのか!?」
人類の痕跡に嬉しくなった私はサイコロを持ち上げて岩の上で振ってみた。
と、突然島全体が大きく揺れた。
地震か、と思ったのだが、どうやら違うらしい。
なんと島は”動いている”のだ。
島がどこかに向かって海を進んでいく。
やがて島が停止したので、私はまさかと思いもう一度サイコロを振ってみた。
するとまた島が動き出した。
やはり、島が動くのはこのサイコロが関係しているのか。
私は島が動きを止める度にサイコロを振った。
島は時にどこかに向かって進み、時にやって来た方向を戻った。
それはまるですごろくのようだった。
しばらく私がサイコロを振り続けると、やがて陸地が現れた。
「しめた!」
私はサイコロのある山を降り、海に飛び込んで陸地に向かって泳いだ。
私が陸地にたどり着いた瞬間、背後から「クオーッ」という大きな鳴き声のようなものが聞こえた。
振り返った私は大いに驚いた。
私がずっと島だと思っていたものは、なんと巨大なクジラだったのだ。
背中にサイコロを載せたおかしなクジラは、くるりと反転して海の向こうへと消えていった。
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