僕は街をぶらぶら歩いている時にある古着屋に入った。
適当に服を見ていたら、おかしな服を見つけた。
「夏でも絶対涼しい! ”悪寒布”で作られたTシャツ」
なんだこりゃ、と思った僕は店員さんにそのTシャツについて聞いてみた。
「あぁ、それはおすすめですよ! 着ると、ぞくりと悪寒を感じて、夏でも涼しく感じるんです。この夏はそれ一枚で涼しく過ごせますよ」
興味を持った僕はそのTシャツを買ってみることにした。
家に帰ってから着てみると、なるほど、今日は特に暑い日なのにぞくりと肌寒く感じる。
何かが後ろに立っている気がしてはっと振り向いたが、誰もいなかった。
これで夏を涼しく過ごせるぞ、と思ったのだが、問題が発生した。
このTシャツを洗濯機で洗濯すると、中から「オボボボ」と奇怪な声が聞こえるのだ。
その声がうるさくて仕方がない。
さらに、洗い終わったTシャツを干しておいたら、外から「キャーーー!!!」と悲鳴が聞こえた。
なんでも、干しておいたTシャツのところに首を吊っている女の人が見えたというのだ。
どうやらこのTシャツには女の霊が取り付いているらしい。
こりゃかなわんと思った僕は、明日Tシャツを返品して文句を言ってやることにした。
その日の夜。
Tシャツをしまっておいたタンスの中から「私みたいに捨てられない、幸せなTシャツがいちま〜い・にま〜い」と聞こえてきた。
おまえはお岩さんか!
僕がTシャツを叱りつけると、Tシャツはめそめそと泣き出した。
女性に泣かれると、それがたとえTシャツであっても弱ってしまう。
結局僕はTシャツの返品をやめた。
しかし、いずれにせよ古着屋に文句は言いに行こうと思っている。
Tシャツに取り付いた霊がすっかり僕に懐いてしまい、涼しくなくなったのである。
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