虫取りTシャツ

ショートショート作品
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 夏休みに、僕はおばあちゃんの家に遊びに行った。

 おばあちゃんの家にはおじさんがいて、僕と弟のユウヤを虫取りに誘ってくれた。

「虫は朝のほうがいるからな。明日の朝行くぞ」

 おじさんにそう言われた僕とユウヤはその日、早く寝ることにした。

 翌朝。

 おじさんが起こしに来て僕は目覚めた。

「ユウヤ、ユウヤ起きろ」

 僕は弟のユウヤを起こそうとしたのだが、全然起きない。

 仕方がないので、おじさんと二人で出かけることにした。

「いいものを持ってきたんだ」

 おじさんはそう言ってTシャツを一枚取り出した。

「なぁに、それ」

「これは”虫取りTシャツ”というもので、我が家に昔から伝わっているものなんだよ。樹液の成分なんかが混ぜてあるのか、このTシャツには虫が寄ってくるんだ」

「へぇ、すごい! じゃあ、僕がそれを着るよ!」

「いや、それはダメだ」

「どうして?」

「樹液にはカブトムシなんかの他にスズメバチも寄ってくるからね。だからこれは着ないでこうするんだ」

 おじさんは長い棒を拾って、その先にTシャツをぶら下げた。

 しばらくそうやって歩いていると、たくさんの虫がTシャツに集まってきた。

 僕は思う存分、虫を取ったのだった。

 おじさんと二人、おばあちゃんの家に帰ると、お母さんに「朝から泥だらけになって〜! お風呂入りなさい」と言われた。

 おじさんと一緒にシャワーを浴びてから居間に戻ると、何やら騒がしい。

 見ると、ユウヤが泣いていた。

 原因は虫取りに連れて行ってもらえなかったことらしい。

「ちゃんと起こしたんだぞ」

 僕がそう言っても、ユウヤは泣き止まなかった。

 ユウヤはあの虫取りTシャツを掴みながら泣いている。

 それを見ておじさんが言った。

「あのTシャツは昆虫以外もとれるんだなぁ」

「どういうこと?」

「ゆーくんは泣き虫だからな」

 おじさんはそう言って笑った。

 ユウヤがより一層泣き出したのを見て、おじさんが「明日また連れて行ってあげるよ」と言うと、ユウヤはようやく泣き止んだのだった。

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