お小遣いがほしいなぁと思っていると、おじさんが面白いものをくれた。
それは「お仕事ジャケット」というものだった。
「これを着てると、お仕事を頼まれるんだ。それで、そのお仕事をやってあげるとお小遣いをもらえたり、食べ物をもらえたりするんだよ。おじさんが使っていたものだからちょっとサイズがでかいかもしれないけど、着てみてごらん」
おじさんはそんな風に言って、僕にグレーのジャケットを着せてくれた。
すると、色々な人から声をかけられるようになった。
荷物を運んで欲しいと言われて運んだら、ちょっとだけお小遣いをもらえた。
誰かのお手伝いをする度に、お小遣いをもらえたりお菓子をもらえたりして、一番凄い時は、たまたま交通事故を目撃して証言をしたら一万円もらった。
僕は満足して一旦ジャケットを脱いだ。
しばらくして、またお小遣いがなくなってきたので、僕はあのグレーのジャケットを着てみることにした。
しかし、どうしたことか、今回は全然声をかけられない。
家に来ていたおじさんに訳を話すと、おじさんも「おかしいなぁ」と首をかしげていた。
すると、そこにお父さんが帰ってきた。
おじさんが「あっ!」と声を上げる。
グレーのジャケットを着たお父さんが言った。
「最近仕事をたくさん頼まれるようになって、夜が遅くなりがちでね。ボーナスが増えるからいいんだけど……」
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