水槽グラス

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 あまりにも暑いので、喫茶店に入った。

 アイスティーを注文する。

 アイスティーはすぐに運ばれてきた。

 店員さんが持ってきてくれたグラスには、小さな色とりどりの鯉があしらわれていた。

 綺麗だなぁと思いながら、ガムシロップを入れる。

 ストローを入れて混ぜようとしたところ、なんとグラスの中のアイスティーがひとりでに渦を巻いて混ざり始めた。

 見ると、グラスにあしらわれた鯉がくるくると回っている。

 どうやらこの鯉たちが飲み物をかき混ぜてくれているらしい。

 驚いている私に、店長とおぼしき女性が声をかけてくれた。

「ちょうどよくかき混ぜてくれますので、鯉たちが泳ぐのをやめたら召し上がってください」

 私は言われたとおりに待ち、鯉たちが止まってからアイスティーを飲んだ。

 アイスティーはとても美味しかった。

 
 それから私は、何度かその喫茶店に通い、店長さんとも親しくなった。

 店長さんは、あの素敵なグラスについて、こんなことを言っていた。

「鯉たちがね、大きくなったらグラスから水槽に移すんだけど、この水槽じゃ狭そうで。特殊な鯉だから外に逃すわけにもいかないし……」

 見ると、水槽の外側のガラス部分を、大きな鯉がばしゃばしゃと泳いでいる。

 確かに少し窮屈そうだ。

「そうだ!」

 私はあることを閃いて、店長さんに相談をしてみることにした。

 店長さんは驚いていたが「そんなことができるなら」と前向きに検討してくれた。

 やがて夏がやってきた。

 子供たちの歓声が響き渡る。

 私の提案は受け入れられ、今、あの鯉たちは私の職場である小学校にいる。

 水槽にいた鯉たちは、学校のプールの壁に移動し、今では流れるプールを作って子供たちを楽しませてくれているのだった。

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