グループ面接に進んだ企業で、いきなり面接官にライターを手渡された。
火をつける、あのライターである。
なんだろう……これ。
私以外の二人の就活生もぽかんとしている。
面接官が言う。
「ではスイッチを押して火をつけてください」
私は言われた通りに火をつけた。
ちょっと強めの火がついた。
横を見ると、私以外の二人のライターには火がついていなかった。
「はい、もう大丈夫です」
面接官はそう言うと、ライターを回収した。
面接はそれで終了だった。
無事、その企業に内定をもらって就職した私は、人事部の人にあのライターについて聞いたみた。
すると、あの時面接をした人事部の部長がライターを持ってきて言った。
「これは情熱ライターと言って、その人がある特定の事柄について、どれほど情熱を持っているか測ることができるんだよ。あの時は、どれだけうちの社に入りたいかを測らせてもらったのさ」
なるほど、世の中には便利なアイテムがあるものだ。
その日、家に帰った私は、夕食の準備を始めた。
しばらくして、彼も帰ってきた。
彼が荷物を下ろし、テーブルの前にどかっと座る。
それからタバコを取り出し、火をつけようとしたようだが、うまくいかないようだ。
「あ? なんだよ、これ。なぁ、他のライターってなかったっけ?」
そう声をかけてくる彼に、私はため息をついてから「話があるんだけど」と切り出した。
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