ショートショート作品

クチナシ様

 旅行先でふらりと登った名前も知らない山で、とても綺麗な女の人に出会った。  その人は山にいるにしては簡素な服装をしていて、何というか浮世離れした雰囲気を持っていた。  その女性は木になっていた見知らぬ実を、つい、と採って...
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水槽グラス

 あまりにも暑いので、喫茶店に入った。  アイスティーを注文する。  アイスティーはすぐに運ばれてきた。  店員さんが持ってきてくれたグラスには、小さな色とりどりの鯉があしらわれていた。  綺麗だなぁと思い...
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転校生の成海さん

 転校生の成海さんはみんなの人気者だ。  何てったって可愛いし、愛想もいい。  転校してきたばかりなのにすぐみんなに馴染んだ。  一部の女子からは煙たがられてるみたいだけど、それはまぁやっかみの範疇だ。  ...
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自動収穫ナス

 コヤギ博士の研究所を訪ねると、博士は上機嫌だった。 「ついに完成したんだよ」  博士は私を研究所の裏手にある畑に案内した。 「まもなくだと思うから、よく見ていたまえ」  私は畑を見た。  そこには...
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やる気職人

 やる気を掘り出す職人がいる。  そんな噂を聞いて僕はその職人を探し回った。  簡単なことではなかったが、なんとかその職人を見つけ出した。  職人は、僕の依頼に黙って頷くと、うろうろとそのあたりを歩き始めた。 ...
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目覚めの場所

 こんな都市伝説を聞いたことがある。  人は極度に疲れると、ある異世界に飛ばされる。  そこは非常に静かな場所で、一人だけ人間がいるらしい。  その人間が身の回りの世話などをしてくれるそうだ。  疲れた人は...
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雨の中で

 私には昔からおかしな能力があった。  それは雨を止める能力である。  私が傘をさすと、雨はすぐに止む。  この能力に気がついたのは、まだ幼稚園に通っていた頃だ。 「傘さすと雨止むよ!」  私が両親...
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名無しの猫

 ここに1匹の猫がいる。  猫は名前を求めて彷徨い歩いていた。  猫は人間たちから様々な名前で呼ばれた。 「タマ」 「ミケ」 「トラ」  しかし猫はそれらを自分の名前だとは思わなかった。 ...
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ぴょこ足

 めんどくさいなぁ……。  目の前の宿題が嫌になってペンを投げ出すと、携帯ゲーム機が私から遠ざかっていった。 「あ〜待って待って! やるから〜」  あのゲーム機には『ぴょこ足』がついている。  本当は違う名...
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僕の取説

 面白いサービスのモニターバイトがあると聞いて、僕は早速申し込んでみた。  こういうことはすぐに試してみたくなるのである。  そのサービスとは、自分の取り扱い説明書を作ってもらうサービスである。  長時間自分のこと...
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