ショートショート作品

育つ手帳

 小さい頃から、お父さんの手帳が羨ましかった。  黒い革の手帳で、すごくかっこ良かった。 「この手帳はね、育てたんだよ」  お父さんが言うには、小さい頃から手帳をつけ続けていたらどんどん育ち、立派になったらしい。 ...
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時計細胞

 ある学者が世紀の発見をした。  "時計細胞"なるものを発見したのである。  幼い頃は一日を長く感じ、大人になると短く感じるが、それはこの"時計細胞"が引き起こしている錯覚らしい。  これまでは、大人になるにつれて...
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想い人射的

 ふらっと散歩をしていると、怪しげな縁日の屋台を見つけた。  その看板には「想い人射的」と書いてある。  へぇ、射的なんて珍しい。 「射的を当てたら、その人に会えるよ」  屋台の親父さんがにやりと笑う。 ...
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ある限界集落のお話

 昔々、あるところに貧しい村がありました。  その村はいわゆる限界集落だったのですが、ある時、村から温泉が出ました。  村人が温泉に足を浸して鼻歌を歌いました。  すると、温泉がボコボコと泡立ちます。  ど...
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波ハンドル

 コヤギ博士に呼び出されて、私は海岸に向かった。  研究所ではなく海岸に呼ばれるなんて珍しい。  私が海岸につくと、博士は水着を着て待っていた。  博士のそばにはサーフボードもある。  サーフィンでもしよう...
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香り苔

 ママ友の家に遊びに行った時のこと。  彼女の家はなんだかいい香りに包まれていた。  お手洗いを借りた時、便座に座ると、なんともいえない良い香りがあたりに漂った。  お手洗いを出た私が「この香りって、芳香剤?」と聞...
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風のクリーニング屋さん

 引っ越してきた町のマンションで私は洗濯をしていた。  夫とは家事を分担していて、在宅ワークをしている私は洗濯を担当している。  息子が毎日服をバンバン汚してくるので、一日に何回も洗濯をしなくてはいけない日もある。 ...
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濾過先輩

 いつも穏やかな先輩が、上司に理不尽な理由で怒られた。  上司は先輩を恫喝し続けたが、先輩は涼しい顔をして聞いている。  自席に戻ってきた先輩に「どうしてそんなに落ち着いていられるんですか?」と聞いてみた。  する...
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侵略を免れた国

 ある日、世界中である怪現象が観測された。  海に模様が浮き出たのである。  それはまるでミステリーサークルのようであった。  ある人間が「宇宙人が目印にして侵略してくるんだ」と言った。  その発言を多くの...
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お仕事ジャケット

 お小遣いがほしいなぁと思っていると、おじさんが面白いものをくれた。  それは「お仕事ジャケット」というものだった。 「これを着てると、お仕事を頼まれるんだ。それで、そのお仕事をやってあげるとお小遣いをもらえたり、食べ物を...
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